AI時代にWordPress経験はまだ武器になるのか
「AIが文章を書いてくれるなら、ブログを運営してきた経験は、もう必要ないのだろうか」
「コードまでAIが作るようになったら、WordPressのために覚えたHTMLやCSSは、意味がなくなるのだろうか」
生成AIを使っていると、便利だと感じる一方で、そんな不安が頭をよぎることがあります。
時間をかけて覚えた操作。何度も調べながら直した表示崩れ。読者に伝わるように書き直してきた記事。それらをAIが簡単にこなしているように見えると、自分の積み重ねまで古くなってしまった気がするかもしれません。
しかし、私は、WordPressの経験はAI時代にも武器になると考えています。
ただし、「今までと同じ作業を、同じ方法で続ければよい」という意味ではありません。経験を、AIへの指示や、AIが出した結果の判断に生かしていくことが大切になります。
この記事では、WordPress経験のどこに価値があり、それをAIとどう組み合わせればよいのかを、身近な例で考えていきます。
WordPress経験はまだ武器になる。ただし、生かし方は変わっていく
まず考えたいのが、「WordPressを操作できること」と「WordPressを使って目的を達成できること」の違いです。
たとえば、問い合わせフォームを設置できることは、一つのスキルです。
一方で、訪問者が問い合わせ先を見つけられないときに、メニューや案内文を見直し、迷わずフォームへ進めるようにすることも、サイト運営に必要な仕事です。
後者では、操作方法を知っているだけでなく、「何が問題なのか」「どうすれば使いやすくなるのか」を考えています。
AIに文章やコードの案を出してもらえても、そもそも何を改善したいのかが曖昧では、望む結果につながるとは限りません。
そこで生きるのが、これまでサイトを作ったり、記事を更新したりする中で身につけた感覚です。
「この見出しでは内容が伝わりにくい」
「スマートフォンだと、このボタンは見つけにくい」
「この設定を変えると、別のページにも影響しそうだ」
こうした気づきは、AIに具体的な依頼をするためにも、提案を採用するか判断するためにも役立ちます。
WordPress経験は、自分で作業するための知識であると同時に、AIを使って作業を進めるための土台にもなるのです。
AIによって、WordPressのどんな作業が変わるのか
経験の生かし方を考えるために、まずはAIを取り入れやすい作業を整理してみましょう。
記事の下書きや見出し案を作る作業
記事を書こうとしても、最初の一文が浮かばない。伝えたいことはあるのに、どの順番で説明すればよいか分からない。
そんなとき、AIに構成案や下書きを出してもらうと、考えるきっかけを作れます。
ただし、文章が整っていることと、自分のブログに合っていることは別です。
初心者向けの記事なのに専門用語が多い。説明は正しそうでも、読者が本当に知りたい部分が抜けている。自分が経験していないことが、体験談のように書かれている。
こうした点は、公開する前に確認しなければなりません。
記事を投稿してきた経験があれば、「このままでは読みにくい」「ここには具体例が必要だ」と考えながら、下書きを仕上げていけます。
HTML・CSSや簡単なコードを書く作業
見出しの見た目を変えたり、余白を調整したりするときにも、AIにコードの案を相談できます。
以前なら、似た事例を検索し、複数のページを読み比べながら書いていた部分で、出発点を得やすくなります。
ただし、生成されたコードが、そのまま自分のサイトで使えるとは限りません。使っているテーマや既存の設定によって、意図しない場所まで見た目が変わることも考えられます。
HTMLやCSSの基礎が分かれば、どの部分を変更するコードなのかを読み取り、必要な範囲に絞って試しやすくなります。
AIがコードを書くからこそ、コードを読めることにも意味があります。
設定方法やエラーの原因を調べる作業
「画像が表示されない」
「更新したらレイアウトが崩れた」
「設定を変えたのに、表示が変わらない」
こうした問題について、AIに確認項目や原因の候補を整理してもらう使い方もあります。
その際には、何が起きているのかを具体的に説明する必要があります。
いつから発生したのか。直前に何を変更したのか。すべてのページで起きるのか、一部だけなのか。
WordPressを運営してきた人なら、問題を調べるために必要な情報を集める場面で、これまでの経験を生かせるでしょう。
AIの回答を正解と決めつけず、仮説として確かめる姿勢も大切です。
AI時代でも生きる、WordPressで培った5つの力
WordPress経験というと、テーマ制作やプログラミングを思い浮かべるかもしれません。
しかし、経験の価値はそれだけではありません。日々の投稿や更新で身につけてきた力も含まれます。
① 読者が迷わないページ構成を考える力
サイトを運営していると、情報を載せるだけでは不十分だと気づくことがあります。
必要な情報があっても、どこにあるか分からなければ、読者には届きません。
たとえば、お店のサイトなら、営業時間や場所、予約方法が分かりやすい位置にあるかが重要です。ブログなら、関連記事へ進むための案内や、探しやすいカテゴリー分けが役立ちます。
AIにページ構成を提案してもらう場合も、「このサイトの訪問者は何を知りたいのか」という視点があれば、提案を具体的に評価できます。
② 文章を読みやすく編集する力
長い段落を分ける。見出しを付ける。難しい言葉を言い換える。必要な場所に画像を入れる。
どれも地味な作業ですが、読者が最後まで読める記事を作るうえで大切な工夫です。
AIが生成した文章にも、同じ編集が必要になります。
特に、自分のブログの読者を思い浮かべながら調整することが重要です。40代からAIを使い始める人に向けた記事なら、専門用語の説明を増やしたり、仕事や日常生活の場面に置き換えたりできます。
「文章を出してもらう」工程にAIを使い、「読者に届く形に整える」工程に経験を生かす。この組み合わせは、記事作成の一つの進め方になります。
③ HTML・CSSなどの仕組みを理解する力
HTMLやCSSを少しでも学んだ経験があれば、AIへの相談を具体的にできます。
「このページをいい感じにしてください」よりも、「この記事内の見出しだけ、文字の大きさと上下の余白を調整したい」と伝える方が、目的が明確になります。
生成されたコードを見て、「すべての見出しに影響する指定になっている」と気づければ、修正も依頼できます。
すべてのコードを暗記している必要はありません。どこを確認すればよいか、何が分からないのかを把握できることにも価値があります。
④ 不具合に気づき、原因を切り分ける力
サイトの不具合では、最初から原因が分かるとは限りません。
だからこそ、「直前の変更を確認する」「影響しているページを調べる」「一度に多くの設定を変えない」といった考え方が役立ちます。
AIが複数の対処法を示した場合でも、何から試すべきか、変更を元に戻せるかを考える必要があります。
また、普段のサイトを知っている人だからこそ、小さな異変に気づけることもあります。
見慣れた画面や、いつもの動作を知っていることも、運営経験の一部です。
⑤ 公開後もサイトを育てていく力
サイトは、公開した時点で完成するわけではありません。
古くなった情報を書き直す。リンク切れを直す。読まれている記事を確認する。更新やバックアップを行う。
WordPress公式の学習資料でも、本体・テーマ・プラグインの更新前などにバックアップを取ることが勧められています。こうした公開後の管理も、サイト運営に含まれます。
見栄えのよいページを作ることに加えて、安心して使い続けられる状態を保つこと。その大切さを知っている経験は、AIを使った制作でも生かせます。
「WordPressが使えるだけ」で止まると、強みが伝わりにくい
ここまで読むと、「WordPress経験があれば、そのままで大丈夫」と感じるかもしれません。
ただ、仕事や活動の中で強みとして伝えるなら、経験をもう一段具体的にする必要があります。
操作の説明だけでは、できることが相手に伝わらない
「WordPressを使えます」という言葉だけでは、どこまで任せられるのかが分かりません。
記事の投稿ができるのか。テーマを調整できるのか。更新の仕組みを整えられるのか。サイト全体の改善まで考えられるのか。
そこで、操作の名前に加えて、相手にとっての役立ち方を説明してみましょう。
たとえば、「固定ページを作成できます」だけでなく、「営業時間や料金などの情報を整理して、訪問者が必要な情報を見つけやすいページを作れます」と伝える。
「記事を更新できます」だけでなく、「担当者が迷わず更新できるように、投稿の手順を整理できます」と伝える。
もちろん、実際にできる範囲で説明することが前提です。そのうえで、何を操作できるかに加えて、何を改善できるかを言葉にすると、経験の中身が伝わりやすくなります。
過去のやり方を守ることと、経験を生かすことは違う
時間をかけて覚えた作業ほど、自分の手で進めたい気持ちになることもあります。
しかし、下書きや情報整理をAIに手伝ってもらえれば、その分、内容の確認や使いやすさの改善に時間を使えるかもしれません。
最初からすべてを自動化する必要はありません。
見出し案だけ出してもらう。コードの意味だけ説明してもらう。公開前の確認項目だけ整理してもらう。
そのような小さな使い方でも、仕事の進め方を見直すきっかけになります。
WordPress経験とAIを組み合わせる、身近な3つの使い方
では、実際にどのような作業から試せばよいのでしょうか。
ここでは、大きな仕組みを作らなくても取り組める例を3つ紹介します。
① 過去の記事の改善案を出してもらう
最初に試しやすいのが、すでに公開している記事の見直しです。
記事を書いたときの目的や、想定する読者を自分が把握しているので、AIの提案が合っているか判断しやすくなります。
プロンプト例
以下は、40代のAI初心者に向けたブログ記事です。
読者が分かりにくいと感じそうな部分を3つ挙げてください。
それぞれについて、理由と改善案を説明してください。
記事全体は書き直さず、元の落ち着いた語り口を残してください。
事実確認が必要な箇所は、推測で補わずに指摘してください。【記事本文】
ここに本文を貼り付けます。
たとえば、「冒頭の専門用語を説明する」「手順の前に、何ができるようになるのかを示す」といった提案が返ってくるかもしれません。
その中から、読者の役に立つと思うものを選んで反映します。
改善案をすべて採用する必要はありません。実体験に基づく大切な説明まで削られそうなら、残す判断をしてよいのです。
② 見た目の調整を相談する
スマートフォンで見たときに文字が詰まっている、見出しの余白が広すぎるなど、気になっている部分を相談する方法もあります。
この場合は、現在の状態と、変更したい範囲をできるだけ具体的に伝えます。
プロンプト例
WordPressの記事ページの見た目を調整したいです。
スマートフォンで見ると、本文内のH2見出しの上下の余白が広すぎます。
メニューやサイドバーには影響させず、記事本文のH2だけを調整したいです。
まず、判断に必要なHTMLやCSS、テーマの情報を教えてください。
コードを提案するときは、その意味と確認すべき点も説明してください。
ポイントは、いきなり完成コードを求めるだけでなく、必要な情報を確認してもらうことです。
変更は、本番サイトに影響しない検証用の環境で試せると安心です。反映後は、スマートフォンとパソコンの両方で表示を確認しましょう。
自分で確認できない変更は、無理に進める必要はありません。AIに説明を求め、それでも判断が難しい場合は、詳しい人に相談することも選択肢です。
③ 更新作業の手順書やチェックリストを作る
WordPressに慣れている人ほど、普段の作業を感覚で進めていることがあります。
その手順を一度書き出して、AIに整理してもらうと、自分用のチェックリストや引き継ぎ資料を作れます。
プロンプト例
以下は、WordPressで記事を公開するときに私が行っている作業です。
初めて担当する人にも分かるように、順番を整理したチェックリストにしてください。
私が書いていない作業を追加する場合は、「追加の提案」として分けてください。・記事本文を入力する
・タイトルを確認する
・見出しの順番を確認する
・画像を設定する
・リンク先を確認する
・スマートフォンでの表示を確認する
・公開する
自分にとって当たり前の作業でも、初めて担当する人には分からないことがあります。
AIを使って経験を言葉にすれば、作業の抜け漏れを防ぐだけでなく、他の人に伝えられる知識として残せます。
なお、これらの相談で記事やコードを入力するときは、公開してよい内容かを確認し、パスワードや顧客情報などは含めないようにしましょう。
40代からは、WordPress経験に「自分の得意分野」を掛け合わせる
WordPressの技術だけを見ていると、「もっと詳しい人がいる」「若い人の方が新しい技術に強い」と感じることがあるかもしれません。
そんなときは、WordPress以外に、これまでどのような仕事や生活の経験を重ねてきたかも振り返ってみてください。
業界や現場を知っていることも強みになる
たとえば、福祉の現場を知っている人なら、施設の利用を検討する人や、その家族が不安に感じる点を考えやすいでしょう。
飲食店で働いた経験があれば、お客さんが知りたい情報に加えて、忙しい現場で無理なく更新できる方法も考えられるかもしれません。
小売の経験があれば、商品について繰り返し聞かれる質問を、説明文やFAQに生かせます。
こうした知識は、AIへの依頼内容にも反映できます。
単に「施設の紹介文を書いて」と頼むのではなく、「初めて問い合わせる家族が、利用までの流れを理解できる文章にしたい」と伝えられる。
その具体性を支えるのが、現場を知っている経験です。
新しい技術を全部覚えようとしなくていい
AIに関する情報を追っていると、新しいサービスや機能が次々に目に入ります。
しかし、WordPress経験を生かすために、それらを全部使いこなす必要はありません。
まずは、普段の作業の中から、時間がかかっていることを一つ選んでみましょう。
記事の構成に悩むなら、構成案の相談から。文章が長くなりやすいなら、読みやすさの確認から。CSSの意味を忘れがちなら、コードの説明から始められます。
実際の困りごとに結びつけると、AIが役に立ったかどうかも判断しやすくなります。
「何年使ったか」に加えて「何を改善したか」を残す
経験を仕事やポートフォリオにつなげたいなら、取り組んだ内容を記録しておくことも役立ちます。
「WordPressを長年使っています」という説明に加えて、どんな課題に気づき、何を変えたのかを残してみてください。
たとえば、スマートフォンで読みにくかった余白を調整した。散らばっていた情報を一つの案内ページにまとめた。記事公開のチェックリストを作った。
数値で成果を測れていない場合でも、変更前の課題、実施した内容、確認できた結果を分けて説明できます。
AIを使った場合は、どこを任せ、どこを自分で判断したかも整理すると、自分の役割が明確になります。
まとめ:WordPress経験を、AIを使うための土台にしよう
AIによって、文章やコードを作る作業の進め方は変わります。
それでも、読み手に合っているかを考えること、サイト全体への影響を確かめること、公開後も使いやすい状態を保つことまで、自動的に解決するわけではありません。
WordPressで積み重ねてきた経験は、そうした判断をするために生かせます。
もちろん、経験年数だけで仕事や成果が保証されるわけではありません。これまでの知識を、目の前の課題にどう役立てるかが大切です。
まずは、過去に書いた記事を1本選び、AIに「読者が分かりにくい部分を3つ教えて」と相談してみてください。そして、返ってきた提案から、自分が納得できるものを一つ反映してみましょう。
提案を比べ、採用するものを選び、実際のページを確かめる。その一連の作業には、これまで培ってきた経験を使えます。
WordPress経験を土台にしながら、AIでできることを少しずつ増やしていく。40代からでも、そんな始め方でよいのではないでしょうか。
