初心者向け

生成AIを仕事で使うときにやってはいけないこと

らぐち

「メールを書く時間を短くしたい」「長い資料を、分かりやすく整理したい」

そんなときに役立つのが、文章や画像などを作ってくれる生成AIです。難しい操作を覚えなくても、普段の言葉でお願いできるため、仕事でも使ってみたいと感じている方は多いでしょう。

ただ、手軽に使えるからこそ、気をつけたいこともあります。顧客のメールをそのまま貼り付けたり、AIの回答を確認せず資料に使ったりすると、情報の取り扱いや内容の間違いが問題になることがあります。

最初から細かな技術を学ぶ必要はありません。まず意識したいのは、**「何を入力するか」「出てきた内容をどう確認するか」「職場で使ってよいか」**の3点です。

この記事では、仕事で生成AIを使うときに避けたい6つの行動と、代わりにどうすればよいのかを、具体例とともに紹介します。

生成AIは便利。でも、仕事では「とりあえず試す」の前に確認したいことがある

仕事で扱う情報には、自分だけでは判断できないものが含まれています。取引先から届いたメールも、会議で配られた資料も、自分が読めるからといって、外部のサービスに自由に渡せるとは限りません。

例えば、顧客からの問い合わせに返信するとき。「このメールへの返事を考えて」と本文を丸ごと入力すれば、署名にある氏名や電話番号、やり取りの中にある取引条件まで渡すことになります。

確認したいのは、使おうとしているサービスが職場で認められているか、そして、その情報を入力してよいかです。

「有料サービスだから安心」「同僚も使っているから大丈夫」とは決めつけず、利用前にルールを確認しましょう。

やってはいけないこと①:個人情報や社内の機密情報を、そのまま入力する

顧客のメールや社内資料を丸ごと貼り付けない

特に慎重に扱いたいのは、次のような情報です。

  • 顧客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス
  • 社外に公開していない売上、見積金額、取引条件
  • 従業員の評価、給与、健康に関する情報
  • ID、パスワード、アクセスキーなどの認証情報

文章のコピーだけでなく、ファイルの添付や画面のスクリーンショットにも注意が必要です。要約してほしい部分以外に、顧客名や内部向けのコメントが写り込んでいることもあります。

個人情報保護委員会も、生成AIへの個人情報の入力について、利用目的の範囲や、入力した個人データが機械学習に利用されないことなどを確認するよう注意を促しています。[1]

入力した情報が必ず公開されるという意味ではありません。しかし、情報の扱われ方を確認せず、業務上の情報を渡してよいわけでもありません。

名前を消すだけでは、十分とは限らない

「氏名をAさんに変えれば大丈夫」と思うかもしれませんが、会社名、部署、役職、具体的な案件などから、誰のことか分かる場合があります。

また、個人を特定できなくても、未公開の事業計画や取引条件などは社内の機密情報である可能性があります。名前を消すことと、外部に渡してよい内容にすることは、同じではありません。

必要最小限の情報や、架空の例で相談する

メールの言い回しを考えるだけなら、実際の顧客情報を入力しなくても依頼できます。

依頼文の例

取引先に納期の変更を相談するメールの一般的な文例を作ってください。会社名、商品名、日付は「○○」にしてください。変更理由や補償については、勝手に追加しないでください。

出来上がった文例を社内で編集し、必要な情報を自分で補えば、入力する情報を減らせます。

ただし、この方法でも職場のルールに従うことが前提です。情報を伏せたから利用制限を無視してよい、ということではありません。

やってはいけないこと②:AIの回答を、確認せずに正しいと思い込む

自然な文章でも、内容が正しいとは限らない

AIの回答は、読みやすく、説明も整っていることがあります。そのため、つい「詳しく説明しているのだから正しいだろう」と感じてしまいます。

しかし、文章の上手さと、内容の正確さは別です。資料名や数字が間違っていたり、古い情報や、条件の異なる説明が混ざっていたりすることがあります。

例えば、ある制度の対象を調べたとき。一般的な説明は合っていても、対象となる年度や事業者の条件が違えば、自分の仕事には使えません。

AIの回答は、確認を始めるための材料として扱うと考えると、距離感をつかみやすくなります。

数字・制度・出典は、元の情報を確認する

確認するときは、内容ごとに確かめる場所を変えましょう。

AIが示した内容確認する場所・方法
売上や割合などの数字元データと照合し、必要に応じて再計算する
制度や手続き担当する公的機関の公式情報を見る
商品やサービスの仕様提供元の公式案内を見る
引用や参考資料実際の資料を開き、該当箇所を読む

「出典を教えて」と聞くだけでは、確認は終わりません。リンク先が存在していても、自分が知りたい内容を裏付けていないことがあります。

リンクを開き、更新日や適用条件まで確認する。少し手間はかかりますが、誤った資料を作って後から修正するより、結果的に仕事を進めやすくなります。

やってはいけないこと③:生成したメールや資料を、そのまま送信・提出する

丁寧な文章でも、相手や状況に合っているとは限らない

AIに「丁寧な返信を書いて」と頼むと、きれいな文章が出来上がることがあります。ただし、その文章が自分の意図に合っているかは別に確認が必要です。

例えば、納期の相談メールに、次の一文が追加されていたとします。

お詫びとして、今回のご請求額から10%を値引きいたします。

文章としては自然でも、社内で決まっていない値引きを約束してしまえば問題です。

ほかにも、まだ調整中の日程を確定事項として書く、確認していない原因を断定する、必要以上に大げさな謝罪にする、といった食い違いが起こり得ます。

「事実と約束」を確認してから、自分の文章にする

メールを送る前には、読みやすさに加えて、次の点を見直しましょう。

  • 宛名、日付、金額、期限は正しいか
  • 自分が伝えていない事実が追加されていないか
  • 承認されていない対応を約束していないか
  • 相手との関係に合った言葉遣いになっているか

依頼する段階で、次のように伝えるのも一つの方法です。

以下の箇条書きをもとに、取引先へのメールの下書きを作ってください。書かれていない事実や約束は追加せず、不明な点は「要確認」としてください。

もちろん、この指示を入れても確認は必要です。AIに整えてもらった後、自分が説明できる文章に直してから送信しましょう。

やってはいけないこと④:会社のルールを確認せず、自己判断で使う

個人で契約しているAIを、仕事でも使えるとは限らない

自宅で便利に使っているサービスでも、そのまま業務に使えるとは限りません。

職場によっては、利用できるサービスやアカウントが指定されていたり、事前の申請が必要だったりします。文章の作成は認められていても、社内ファイルのアップロードは認められていない、という運用も考えられます。

そのため、「AIの利用が認められているか」に加えて、**「どのサービスで、どの情報を使い、何をしてよいか」**まで確認することが大切です。

ルールが分からないときは、用途を具体的に伝える

確認するときは、何をしたいのかを具体的に伝えると、相手も判断しやすくなります。

メールの一般的な文例を作るために、生成AIを使いたいと考えています。顧客情報や社内資料は入力しない予定です。利用できるサービスや、必要な申請があれば教えてください。

ルールが見当たらない場合も、「禁止されていないから自由に使える」と判断せず、上司や情報管理の担当者に相談しましょう。

会社で利用できないからといって、個人アカウントや私物のスマートフォンに業務情報を移して使うのも避けてください。使う端末を変えても、情報の取り扱いに関する問題は解消しません。

やってはいけないこと⑤:生成された文章や画像を、権利の確認なしに使う

「AIが作ったものだから自由に使える」と決めつけない

会社のブログや広告、営業資料に、AIが作った文章や画像を使いたい場面もあるでしょう。

このとき、「AIが生成したものなら、他人の権利は関係ない」と考えるのは危険です。文化庁の資料でも、AI生成物の利用に当たり、既存の著作物との類似性や依拠性などが問題になることが説明されています。[2]

難しく感じるかもしれませんが、まずは、**「既存の作品と似ていないか」「その作品をもとに作らせていないか」**という視点を持ちましょう。似ているだけで直ちに侵害と決まるわけではありませんが、AI生成という理由だけで確認を省くこともできません。

社外に公開するものは、素材と利用条件を確認する

例えば、他社の記事を丸ごと入力し、「少し言い換えて自社の記事にして」と頼む方法は避けましょう。言葉を置き換えただけでは、問題を解消できるとは限りません。

自分で整理した要点や、利用できる資料をもとに下書きを作る方が、内容と出典を管理しやすくなります。

画像についても、参考にする素材をAIに読み込ませてよいか、出力した画像が既存のキャラクターなどに似ていないかを確認します。サービス側が商用利用を認めていても、他人の権利を侵害しないことまで保証されるとは限りません。

社外に公開するものは、使用する素材やサービスの利用条件を確認し、判断に迷う場合は担当者に相談してから使いましょう。

やってはいけないこと⑥:自分が理解できない内容を、そのまま仕事の判断に使う

もっともらしい提案でも、自分の職場で実行できるとは限らない

AIに業務改善の案を出してもらうと、自分では思いつかなかった提案が得られることがあります。

ただし、AIが職場の事情をすべて把握しているわけではありません。「専任担当者を置く」という提案が出ても、その人員を確保できない職場では実行が難しいでしょう。

同じように、売上予測なら計算の前提、表計算の数式なら対象範囲、プログラムなら実行した際の影響を理解する必要があります。

人事評価や契約など、他者への影響が大きい判断についても、AIの結論だけで決めないようにしましょう。

結論だけでなく、前提と確認事項を聞く

提案の意味がつかめないときは、次のように聞き直してみてください。

この提案が成り立つ前提条件と、実行前に確認すべきことを、専門用語を使わずに説明してください。人員・費用・作業時間の面で、難しくなりそうな点も挙げてください。

こうすると、検討すべき点を整理しやすくなります。

ただし、AIが自分の提案を説明できたからといって、その提案が正しいと証明されたわけではありません。説明を読んだうえで、現場の条件や元データと照らし合わせる必要があります。

自分で説明できない部分が残るなら、そのまま実行せず、分かる人に確認しましょう。

仕事で使う前に確認したい、5つのチェック項目

ここまでの内容を、実際の作業の流れに沿って整理すると、次のようになります。

タイミングチェックすること
利用前会社で認められたサービス・用途か
入力前入力が認められていない個人情報や機密情報が含まれていないか
出力後事実・数字・出典を確認したか
送信・公開前不適切な表現、勝手な約束、権利上の懸念がないか
判断・実行前自分で内容と前提を説明できるか

すべてを一度に覚えようとする必要はありません。まずは、「入力する前」と「外に出す前」に立ち止まる習慣をつけてみてください。

もし誤って入力してはいけない情報を送ってしまった場合は、会話を削除するだけで解決したと考えず、職場の手順に沿って速やかに担当者へ相談しましょう。

まとめ:生成AIは、任せきりにせず「下書きと整理の相手」として使おう

生成AIを仕事で使うときは、情報を何でも渡したり、出てきた答えをそのまま採用したりしないことが大切です。

会社のルールを確認し、入力する情報を選ぶ。そして、出力された内容を自分で確かめてから使う。この流れを守ることが、仕事で活用するための土台になります。

最初は、職場で認められた範囲で、機密情報を使わない一般的なメールの文例づくりや、会議の進め方のアイデア出しなどから始めるとよいでしょう。

40代、50代からAIを使い始める方にも、これまで仕事で積み重ねてきた経験があります。「この表現では相手が困る」「この数字はおかしい」「この約束は勝手にできない」と気づく力は、AIの文章を確認するときにも役立ちます。

AIに下書きや整理を手伝ってもらい、自分の経験で確かめる。そんな使い方から、無理なく仕事に取り入れてみてください。


参考資料

  1. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
  2. 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」

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らぐち(村上英輝)
らぐち(村上英輝)
AIが得意なおじさん
40代独身社会人。日常から仕事まで生成AIを使ってアレコレ楽をすることに夢中です。仕事はWeb制作やSEOです。おじさんAIでは「AIが得意じゃない人のための、キラキラしていないAI活用術」を熱心に更新しています。一番好きなのはCursor。
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